【概要】
動詞の活用の話をした回で、「動詞の活用には未来形がない」と言いました。
過去・現在の文では、動詞が姿を変えて、「今、過去のことについていっているんだよー」とか「これは現在のことだよー」と教えてくれるのに、動詞には肝心の「未来」を表す形がありません。
そこで、英語では「助動詞」ということばを使って「未来」のことを表すことになります。
今日は助動詞についての解説と、助動詞を使った場合の重要なルールを説明します。
「助動詞」ってなんだ?
「助動詞」とは、読んで字のごとく、動詞を助けることばです。
助動詞を使うことで、動詞に一定の意味加えて、意味に幅を持たせて表現を豊かにすることができます。
また、助動詞は、文を作る際には「オプション」となります。つまり使わなくても文としては完成しますが、もうちょっと意味を加えたいなー、という場合に助動詞の助けを借りて、意味を広げていくのです。
例えば「未来」について言いたいときは、「will」という助動詞を使って未来であることを聞き手に伝えます。
I will run. 私は走るつもりだ。
「走る」という行為は、今現在行っているわけではありません。将来走るだろう、走るつもりであることを今、言っているのです。
ルール:助動詞+動詞の原形
上の例でみたように、
- 助動詞は動詞の前に置くこと、そして、
- 助動詞を使ったら動詞は原形を使う
というルールがあります。
動詞の原形とは、文字通り「もともとの形」という意味で、
・be動詞の場合:「be」
・一般動詞の場合:辞書にのっている形
となります。
次の例を見てみましょう。
例:
He runs. (彼は走る)
He will run. (彼は走るだろう)
上の文では、仮に現在のことを言いたいとして、その場合動詞を現在形にしますが、主語が3人称・単数ですので、「run」の最後に「s」を付けて「runs」としています。
しかし、2つ目の文では「will」という助動詞を使っているので、「run」を原形にしています。
基本英文法のフレームワークに助動詞を追加!
さて、オプションとは言え、動詞の前に「助動詞」を置くということが出てきましたので、ここで、基本英文法のフレームワークをアップデートしましょう。
動詞の前に「(助動詞)」を置きました。(緑の部分)
( )書きであるのは、必須ではない、という意味です。
<基本英文法のフレームワーク (updated)>
助動詞は全9種類
willのほかにも助動詞はありますが、全部で助動詞は9種類しかありません。
<助動詞:9種類>
このように、助動詞には、動詞と同じように「現在形」と「過去形」があります。
「will」は未来のことをいうことばなのに、「現在形」だなんておかしいですが、「今現在において未来はこうなる」という意味だ、と理解しておきましょう。
(1)から順に説明します。
(1)will
「will」は未来を表す助動詞です。
動詞に対して、それが未来に起きる動作や状態であるという意味を付加します。
「will」には「意思」という意味があります。
助動詞として使われる場合も、
①~するつもりだ
と、元々「~する意思がある」という意味があります。
つまり「意思を持って将来すること」を語る時に使われる言葉です。
そこから発展して、意思のある・なしに関わらず、
②~するだろう
と単純に未来のことを語る際にも使われるようになりました。
①意思のある未来
②単純な未来
どちらかなのかは、文脈で判断するしかありません。
(2)shall
「shall」も未来を表す助動詞です。
古い小説や聖書で見かける言葉で、文語的であり、堅苦しい感じがするため、口語では、「will」で代用されてしまい、ほぼ使われません。
「will」が人の意思で「そうする」という未来を表すのに対し、「shall」は「もうそうなることが確定しているんですよ、あなたの意思など関係ないんですよ」といったニュアンスがあります。西洋的に言えば「神の意思」によって決定している、といったところでしょうか。
堅苦しいという性格と相まって、契約文でよく見かけます。
「xxとなった場合は、~することとする」みたいな文章で出てきます。確定している未来、というニュアンスがでていますね。
(3)can
「can」の本来の意味は、「~することができる」です。能力があるため「可能であること」を表す助動詞です。
①~することができる
といった形で、能力を根拠にして、それが「可能」であることを伝えます。
ところが、「可能であること」を広めに解釈すれば、
②(してもよいという意味での)~することができる(例:ここで写真を撮ることができる→写真を撮ってもよい)
といった「許可」の意味も出てきます。
③そういう状態であってもよい(例:それは本当であることができる→本当である可能性がある)
といった「可能性」があるといった意味まででてきます。
どの意味で「can」が使われているのかは、文脈で判断するしかありませんが、一般的な傾向としては、
・「can」の後にbe動詞が続く場合:「可能性」を表す(~である可能性がある)
・「can」の後に一般動詞が続く場合:「能力」「許可」を表す(~することができる)
となります。
例:
I can run. (私は(走るという能力があるため)走ることができる)【可能】
It can be an apple. (それは、りんごである可能性がある、りんごであり得る)【可能性】
(4)may
「may」の本来の意味は、「~してもよい」という「許可」の意味があります。
①~してもよい(例:ここで写真を撮ってもよい)
この「許可」の意味を少し広くとらえると、
②~であるかもしれない(例:これはりんごであってもよい→これはりんごであるかも知れない)
といった「推量」の意味が出てきます。
どちらの意味で使われているかは文脈から判断するしかありませんが、「can」と似ていて、一般的な傾向としては、
・「may」の後に、be動詞が続く場合:「推量」を表す(~であるかもしれない)
・「may」の後に、一般動詞が続く場合:「許可」を表す(~してもよい)
となります。
例:
You may run. (あなたは走ってもよい。走ることが許されている)【許可】
It may be an apple. (それは、りんごであるかもしれない)【推量】
(5)must
「must」の本来の意味は、「~しなければならない」という「義務」です。
①~しなければならない(例:罰金を払わなければならない)
「~しなければならない」という「義務」を、少し広くとらえると、
②~に違いない(例:やつが犯人でなければならない→やつが犯人に違いない)
という強い「確信」という意味合いも出てきます。
どちらの意味で使われているのかは文脈から判断するしかありませんが、一般的な傾向としては、「can」「may」と似ていて、
・「must」の後に、be動詞が続く場合:「確信」を表す(~に違いない)
・「must」の後に、一般動詞が続く場合:「義務」を表す(~しなければならない)
となります。
例:
You must run. (あなたは走るべkだ)【義務】
It must be an apple. (それは、りんごであるに違いない)【強い推量(確信)】
次に過去形を見てみます。
助動詞の過去形は、実にいろいろな意味を持たせることができる便利なことばなのですが、ここでは一旦、基本的な部分だけを紹介します。意味の広がりについては、今後説明していきます。
(6)would
would はwill の過去形です。
過去から見て未来のことをいう時に使います。
(7)should
shouldは文法上はshallの過去形なのですが、shallとは全く意味が違ってきており、
~すべきだ、といった義務を表す時に使います。
例:
I should run. (私は走るべきだ)
では、
I must run. (私は走るべきだ)
とどう違うのでしょうか?
shouldはどちらかというと、そういう必要性に迫られている状態であるのに対し、
mustは義務でそうしなれければならいことを表します。
従って、mustの方が強い強制力を感じます。
また、後ろにbe動詞が来るような文の場合、当然~のはずだ、という強い推量を表すこともあります。
例:
It should be an apple. (それは(当然)りんごのはずだ)
mustに非常によく似ていますね。
(8)could
couldは、can の過去形です。
過去のある時点で「~できた」といった能力を表すときや、後ろにbe動詞を伴う文の場合は、「~である可能性があった」ということを表します。
(9)might
mightは文法上はmayの過去形ですが、こちらもshall – should の関係のように、特に過去のことをいうつもりではない場面でも使われます。
特に非常に弱い推量・可能性を表す時に使われます。
例:
I might run. ((ひょっとしたら)走るかも知れない)⇒かなりの確率で走らない、ということ。
助動詞の真髄:なぜ助動詞を使うのか?
色々と意味が出てきましたが、助動詞の持つ意味に共通していることは、いずれも、
「動作や状態を事実として述べてはいない」
という点です。
「~するだろう」とか「~かもしれない」「~にちがいない」とか「~できる」等、全て、「~した」とか「(今)~する・している」といった事実ではありません。
例えば、助動詞のない文を見てみます。
例)
It is an apple.( それはりんごだ)
「それはりんごである」という事実として断定する文となります。
助動詞がないと、動詞の行為や状態が、今、現実として起きている、または過去に起きた、という事実を述べる文となります。
ところが助動詞を使えば、事実とまでは言い切らない文ができます。
例1)
It may be an apple. (それはりんごかもしれない)
例2)
I will run. (私は走るつもりだ)
このように、事実としての断定を避けるために助動詞が使われるのです。
これが助動詞の「動詞に対する助け方」であり、助動詞を使う理由というわけです。
但し、事実としての断定を避けているとは言え、その避け具合は異なります。
別の言い方をすれば、「話し手の自信の度合い」と「話の手の思いの強さ」が異なります。
これを下の図で整理しています。
<図4.自信の度合い・気持ちの強さ 比較(イメージ図)>
縦軸に「話し手の自信の度合い」(かなり自信がある~あまり自信がない)をとります。
横軸に「話し手の気持ちの入り方」(気持ちの入り方が強くもはや義務的~気持ちは弱く結構任意的)をとります。
そこに、各助動詞をプロットしてみました。
例えば、「will」や「shall」。
未来のこととは言え、「確定している未来」を表す「shall」や、「意思あり」を表す「will」はかなり事実となる確度が高い、という自信が話し手にある状態です。
少しだけ、「will」のほうが、場合によって意思が入りますので、思いとしては、「shall」よりは強くなります。
「must」についても、「きっとそうに違いない」と確信している状態ですから、自信はかなり高めです。
また「must」は「~しなければならない」と話し手の強い思いが感じられる一方で、「may」は「~してもいいよ」とかなり弱めです。
「can」の「~できるよ」という語感は、「must」の強い語感に比べると弱いが、「may」ほど弱くもないので、なんとなく中間点くらいにいる感じです。
例)
1.You must run.(あなたは走らなければならない)
2.You can run. (あなたは走ることができる)
3.You may run. (あなたは走ってもよい)
上記のうち、1はかなり強い語感、3は「どちらでもいいよ」という感じで、話し手の思いは弱い感覚、2はその中間くらいのイメージです。
あくまでイメージですが、このように、事実・断定を避ける助動詞には、
・話し手の自信の度合い
・話し手の気持ちの入り方
の点で差がある、ということを感覚的にご理解いただけたら幸いです。
まとめ
今日のポイントを最後にまとめてみてます。
1.
完全な文を書く上では、動詞は必須の品詞であるが、助動詞の使用はオプションであり、必ずしも使う必要はない。
2.
助動詞を使う場合、動詞に一定の意味を加える。
3.
一定の意味とは、動詞だけだと意味してしまう「事実としての断定」を避けることである。
4.
「will」は「~するつもりだ」「~だろう」という意思のある未来、または単純な未来について語る時に使う。
過去形の「would」は過去からみて未来を表現する場合に使われる。
5.
「shall」は「~することになっている」という確定した未来について語る時に使う。但し、現代では通常「will」で代用されてしまい、契約書など堅い文以外には登場しない。
過去形の「should」はshallから意味的に離れて、「~すべきだ」という義務や「(当然)~のはずだ」という強い推量を表す。
6.
「can」は「~できる」という意味から、能力・許可・可能性までを意味する時に使う。
過去形のcouldは、過去のある一点において「~できた」や「~でありえた」という可能・可能性を表わす。
7.
「may」は「~しても良い」という許可や、「~かもしれない」という推測を表す時に使う。
過去形のmightは、非常に可能性の低い推量を表す時に使われる。
8.
「must」は「~しなければならない」という義務や、「~に違いない」といった確信を表す時に使う。
mustに過去形はない。
9.
各助動詞には、事実である可能性の高さ(確度)に対する「話し手の自信の度合い」と「話し手の気持ちの入り方の強さ」に違いがある。
10.
助動詞を使ったら、動詞は原形を使う。
以上、助動詞でした。
・各助動詞の意味
・使った時の動詞の形の変化
・助動詞を使う理由
もうわかりましたよね。
今回も最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
「凡人でのペラペラになる唯一の英語勉強法」には、この他、多くの記事が体系的に整理されています。