【概要】
世界でのビジネスを通じて実感していることは、確実に、発音の悪さは日本人英語の伝わらなさの原因の一つとなっていることです。もちろん、それだけではありませんが、基本のキとして、ある程度、許容範囲内で正しく発音する事が大切です。
今回は、各アルファベット文字がそもそも表現したい音は何か、その真髄をさくっと理解することが狙いです。
全アルファベットの発音を網羅的に解説した記事はこちらになります。
是非、ざっとご覧下さい。
<図1:今日の説明範囲>
【結論】各アルファベット文字が表現したい音はどんな音か?
各アルファベットの文字には、もともとそれが表現したい音があります。これをまずは理解しておくことが重要です。
以下で一気に見ていきます。
母音:A, E, I, U, O
母音が表現したい音は以下2つです。
①アルファベットの呼び名そのままの音(エィ、イー、アイ、ユー、オゥ)
②ローマ字で読んだ時の音(ア、エ、イ、ウ、オ)
バリエーションはありますが、上記2種類の音、これが基本です。
子音:他21文字
子音は、アルファベット文字の読み方というより、そもそもその文字が表現したい音というものがあります。
以下でそれを見ていきます。
※色つきの解説は、特に日本人が注意したい発音
B:
口を閉じた状態から発する「ブッ」という音がBでは重要です。
C:
日本語の「ス(su)」から「u」音を抜いた音、
または「クッ」という音
D:
日本語の「ダ(da)」から「a」音を抜いた音
F:
上の歯の先を下唇に軽く触れて声は出さずに息だけを吐き出す音
G:
日本語の「ジィー(ji-)」から「ィー(i-)」音を抜いた音
または、「グッ」という音
H:
日本語の「ハ(ha)」から「a」音を抜いた音、息を吐き出す音
J:
日本語の「ジェィ(jei)」という音から「ェィ(ei)」音を抜いた音
K:
日本語の「ケィ(kei)」という音から「ei」音を抜いた音
L:
舌の先を、上の歯の裏側、歯茎との間位につけながら出す音
M:
口を閉じてから「マ(ma)」という時の「a」音を抜いた音
N:
口を閉じないで「ナ(na)」という時の「a」音を抜いた音
P:
日本語の「ピィー(pi-)」から「ィー(i-)」音を抜いた音
Q:
日本語の「ク(ku)」から「u」音を抜いた音、Kと同じ音
R:
舌を口の中の奥に少しだけしま息の通りを若干悪くしてこもらせる音
若干伸ばす音と短く伸ばさない音がある
S:
日本語の「ス(su)」から「u」音を抜いた音、またはそれが濁って「Z」と同じ音
T:
日本語の「ティー(ti-)」から「ィー(i-)」音を抜いた音
V:
上の歯の先を下唇に軽く触れて声を出す音
W:
口を少しすぼめてた状態から若干開きつつ「ゥワッ」と発する音
X:
日本語の「クス(kusu)」から「u」音を抜いた音(ks)、または「グズッ」という音(gz)
Y:
日本語の「ィエ」を素早く言った時の音、昔の「ゑ」が表現したかった音
Z:
日本語の「ズィ(zui)」を素早く言った時の音から「ui」音を抜いた音
若干のバリエーションはありますが、上記が基本です。
日本人が意識して気を付けたい音
日本人にはほぼ同じに聞こえるが、英語圏の人からすると全く違う音として聞こえるものを意識して理解し、発音していくことが大切です。似ている文字を対比して覚えるのです。
ここでは、我々日本人にとって重要な対比となる文字を挙げます。
おそらく、ここに挙げる対比をおさえれば、「日本人にしてはしっかり区別した発音してるね」と思われると思います。
<図1:日本人が違いを意識して発音すべき文字>
「B」と「V」
「B」は口を閉じてから発する「ブッ」という音にその神髄があります。
一方で、「V」は、「F」と似ていて、上の歯の先を下唇の裏側に軽くあてて声を出した時の音となります。「F」は同じ形を作って、息だけを吐き出すだけで作る音で、声を出しません。
日本人としては、「V」音が苦手ですから、普段からかなり意識することが必要です。
「B」
「V」
「L」と「R」
日本人はLとRの区別が出来ない、とよく言われます。
「L」は、舌を上の歯の裏側、歯茎との境目位に置いて発する音を表現するための文字です。
一方「R」は、舌を口の中で若干奥へ引っ込めることで空気の通りを悪くし、こもらせる音です。
双方、厳密には、日本語の「らりるれろ」とは異なる音です。
「L」も「R」も日本語にない音ですので、しっかり意識して発音することが必要です。
「L」
「R」
「M」と「N」
「M」は口を閉ざして「マ(ma)」と発する音から「a」音を抜いた音、
「N」は口を閉ざさずに「ナ(na)」と発する音から「a」音を抜いた音となります。
口を閉ざすか、閉ざさないか、普段から意識して発音し練習ましょう。
「M」
「N」
「F」と「H」
「F」は「V」と同じ口の形を作ります。つまり、上の歯の先を下唇の裏側に軽くくっつけます。そして、息だけを「フー」と吐き出して作る音です。息だけ吐き出す点が「V」とは異なります。
一方、「H」は、日本語の「ハヒフヘホ」と同じように、口を開けて息を吐き出す音となります。
英語圏の人のしゃべりを聞いていると、「F」の音が非常にはっきり聞こえるのですが、日本人の英語でのしゃべりを聞くと、この「F」が聞こえず、「H」音に聞こえる場合がとても多く、違和感を感じることが多いです。
「F」はしっかり、下唇を軽く噛んで発音することを心がけましょう。
「F」
「H」
「TH」と「S・Z」
「TH」はアルファベットではありませんが、頻出しますので、是非覚えておきたい発音です。
舌を上下の歯で軽く噛んで、声を発する音、または息だけを吐き出して作る音です。
日本人に対する聞こえ方は、「Z」や「S」ととてもよく似ているため、ZやSと同じように発音する人が多いと思います。
一方、「Z」は「ズ(zu)」の「u」音を引いた部分の音です。「S」は「ス(su)」から「u」音を引いた部分の音です。
「The」や「Thank you」の時には、しっかり舌を噛んで発するよう普段から注意し慣れてしまいましょう。
「TH」
「S」
「Z」
以上、重要な対比を意識して発音することを心がけていくと、かなり良くなると思います。
以上が全てですが、もう少し、深堀り分析して、アルファベットの音の真髄を更に詳しく理解したい方は、この後も是非お読み下さい。
母音・子音に分けて分析すると面白い
アルファベットをまず、母音と子音に分けて考えます。
母音は、A, E, I, U, O の4つ。
その他は、全て子音とします。
母音の定義
母音の定義は、「声帯のふるえを伴う有声音で、舌、歯、唇または声門で息の通り道を、完全にも部分的にも、瞬間的にも閉鎖はせず、また息の通り道を狭くすることによる息の摩擦音を伴うこともない」(「Wikipedea」)だそうです。
つまり、簡潔に言えば、
「舌や唇で発声が妨げられない音」
と言えそうです。
こうして分類し、それぞれをつぶさに見ていくと、面白いことが分かってきます。
<図2:母音と子音のパターン分け>
母音の分析
まず母音。
英語の単語には「アクセント」といって、一箇所、音にストレスをつけて強く発音する部分が必ず存在します。
アクセントは必ず母音につきます。
アクセントが付く場合の、各母音の発音を見てみますと、概ね、以下2つパターンで出てきます。
①アルファベット読みと同じ音
②ローマ字読みと同じ音
一文字一文字見ていきます。
「A」の発音パターン
①アルファベット読みの場合:
エィ(例)take
②ローマ字読みの場合:
ア(例)can
<注意点>
②ローマ字読みの「ア」には、細かく言うと色々なバリエーションがあります。「ア」と「エ」の中間音のような音(apple)や、「ア」と「オ」の中間音のような音( watch)など。
しかしこれらはローマ字読みのバリエーションであり、全く違う音とは言えません。正直、「ア」と発音しとけば通じる範囲です。
細かい部分はその都度覚えるとして、方向性としては、①か②のどちらかになります。
「E」の発音パターン
①アルファベット読みの場合:
イー(またはイ)(例)be
②ローマ字読みの場合:
エ(例)test
<注意点>
①アルファベットの読みで発音される場合、「イー」と伸ばさずに、「イ」と短く読まれることもあります。(例:English)どちらかと言うとこの短い「イ」と発音する方が多いかと思います。いずれにしても、アルファベット読みの延長です。
「I」の発音パターン
①アルファベット読みの場合:
アイ(例)kind
②ローマ字読みの場合:
イ(例)will
「i」にアクセントがくる場合、必ず、①か②となって発音されると思います。
「O」の発音パターン
①アルファベット読みの場合:
オゥ(例)no
②ローマ字読みの場合:
オ(例)office
<注意点>
「O」は若干やっかいで、「now」や「mother」など、明らかに「ア」音となって現れたりします。基本的には、この3音、いずれかで発音されると思います。
「U」の発音パターン
①アルファベット読みの場合:
ユー(例)cute
②ローマ字読みの場合:
ウ(例)full
<注意点>
「U」も若干やっかいで、「run」や「under」など、明らかに「ア」音となって現れたりします。基本的には、この3音、いずれかで発音されると思います。
母音 まとめ
母音の発音は、
①アルファベット読みする場合
②ローマ字読みする場合
若干のバリエーションがあるものの、この2つのパターンが基本、とまずは理解しておきましょう。
子音の分析
<図2:母音と子音のパターン分け(再掲)>
子音21文字の発音をよく見てみると、4つのタイプに分類されることがわかります。
①「エ」と発音した後、プラス「1音節」で終わる文字
F, L, M, N, S, Xが該当します。
②「イー」で終わる音
B, C, D, G, P, T, V, Zが該当します。
③「~エイ」で終わる音
J, Kが該当します。
④上記、どれにも当てはまらない文字
H, R, Q, W, Yが該当します。
これはどういう意味なのでしょうか。
それぞれ説明します。
①「エ」と発音した後、プラス「1音節」で終わる文字
F, L, M, N, S, X
これは、全てに付く、最初に発音する「エ」音は重要でないことを意味しています。
発音の真髄は、「エ」の後にくる音にあります。
「F」であれば、エと発音した後の、「フ」の音、つまり、上の歯の先を下唇の裏側辺りに軽くくっつけて息を吐き出す音。この音が重要である、という意味です。
ところが、いざアルファベット各文字に名前(呼び名)を付けて呼ぼうとした時、「(上の歯を下唇につけて息を吐く音をつつ)フがさー」と言ってもなんだか意味が分からなくなるので、意味のない「エ」の音を最初につけることで、判別可能な、分かりやすい呼び名にした、ということだと思います。
このカテゴリーで要注意なのは「X」です。
「X」が表したい音は「クス(ks)」という音で、たまに、「グズ(gz)」に変形して出ますが、これは予想の範囲です。しかし、なぜか、Xが単語の最初に来ると、「Z」の音に変化するのです。
(例)Xerox(ゼロックス)
おそらく、「グズ(gz)」の「z」音が強調されたのだと思いますが、意味が分かりません。まあ言葉ですからね、「これはそういうもの」と理解するしか無さそうです。
②「イー」で終わる音
②「イー」で終わる音、B, C, D, G, P, T, V, Z についても①と同様のことが言えます。
最後に意味のない音「イー」を後ろに付けることで、アルファベット文字の名前として判別可能な状態を作っている、と思われます。
やはりこれらアルファベット文字の発音の真髄は、「イー」の前にくる音になります。
例えば、「B」であれば、口を閉ざした状態で「ブッ」と声を出す音が重要だ、ということです。
③「エイ」で終わる音
③「エイ」で終わる音、J, Kも同様で、「J」であれば、「ジュ」という音、「K」であれば「ク」という音が重要となります。
④上記、どれにも当てはまらない文字
④上記、どれにも当てはまらない文字(H, R, Q, W, Y)はどうでしょうか。
「H」
Wikipediaによると、「エイチ」とう呼び方は、元来ラテン語で「ハ」と呼ばれたいたものが、ラテン語経由で変形して「アハ」、「アイチ」となり「エイチ」となったようです。
「H」は、アルファベットでの呼び方「エイチ」というより、元々の音である「ハ」という音、日本語的にいうと「ハヒフヘホ」の各文字の、最初に息を吐き出す音にその真髄があります。
「R」
Rはとても厄介な文字です。
米国では、舌を口の中で少し奥側にひっこめて、声をこもらせる音になりますが、英国では「アー」とただ伸ばした音となり、舌は全く動きません。
従って、英国式「R」の場合、定義上「母音」となりますが、実際、単語のなかで出てくる場合、英国式英語でも舌を若干奥へ引っ込める音になる場合もあり、そういう意味では子音です。
また、多くのヨーロッパの国では、Rをかなり強く発音して、「ガルルルルー」という時の舌の動きように、口のなかで上の歯茎に舌を付けて発する音となる、日本語の「ル」に近い音になったりします。
但し、日本語の「ル」よりも、もっと奥側の上歯茎に舌をつけますので、若干、違います。ヨーロッパの人と英語で話していると、このクセがでて、Rを「ラリルレロ」に近い音で発声することがあり、「彼らの言語でRは舌を上歯茎につけるんだな」とわかったりします。
いずれにしても、英語では、舌を少し奥に引っ込めて、口の中の上歯茎に近づけるようにしつつも、くっつけずに、息の通りを少しだけ悪くして音をこもらせて発声する音、と考えておけば良いでしょう。
空気の通りを少しとは言え妨げますので、子音に分類されます。
「Q」
Qはどうでしょうか?
もともとはアルファベットの起源であるフェニキア文字の「コーフ(Qに近い文字)」に由来し、ギリシャ語で「コッパ」、ラテン語で「クー」となり、現在のヨーロッパでは「クー」「キュ」などとも発音されるようです。
かなり「K」に似た音であったが、「K」とは若干異なる音を表現するために残った文字ようです。
現在の英語ではQにあてられる音は、Kと同音と考えてよく、Qの発音の真髄は「クッ」というK音にあります。
「W」
Wは、二つの「U」、Uが二つ重なっていますよ、という意味の「ダブル U」が呼び名の由来です。
ですから、ダブリューという呼び方と、Wが表したい音とは全く関係がありません。
元々、アルファベット文字には「W」「U」は存在しておらず、「V」という文字が、似て非なる3つの発音をまかなっていたようです。
それから「u」の音と「w」の音を表現するために「V」から派生して「U」と「W」ができ、「W」に関しては、形としては「V」を2つ重ねたものでありつつ、呼び名としては「2つのU」となったという、なんともへんてこな文字です。
「W」が表したい音は、口をすぼめてから、若干開きつつ発する「ゥワッ」という音で、日本語にはない音です。
「W」音の真髄は、この「ゥワッ」ということになります。
「Y」
最後に「Y」です。
「Y」は「U」や「W」と同様、もともとアルファベットにはなかった文字のようです。
ローマがギリシャを征服した時に、Yを取り入れたようです。
現在の英語で「Y」に表現させたい音は、「ィエ」という音、つまり軽く発する「ィ」と「エ」をほぼ同時に発する音に近く、日本語の「ヤ・ユ・ヨ (ya/yu/yo)」から「a/u/o」を抜いた音と理解すれば、あまり困らないのでそれで良いと思います。
昔の日本語で「ゑ」という文字で表したかった音と似た音だと思います。
おさらい
発音の悪さは、日本人の英語を伝えにくくしている原因の一つだと思います。
発音は、アルファベット文字が元来表現したかった音を理解し、完璧といかなくても全然良いので、許容される範囲まで矯正する必要があります。
そして、瞬時にそれが出てくるよう癖として体に染み込ませること、そのために、英語に触れる度に普段から意識して発音する練習を重ねていくことが重要です。
日本人は注意すべきアルファベットの発音は以下、5つの対比する文字で理解し、違いを強調するよう発音することが、上達への道だと考えます。
正直、誰でも許容範囲まで発音を矯正することは比較的容易だと思いますので、是非、頑張ってマスターして欲しいなと思います。
<図1:日本人が違いを意識して発音すべき文字(再掲)>
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。